がーん。
確かに伝統工芸の職人さんは減る一方なんです。
でも、職人になりたい人が少ないかというと、決してそうではない。むしろ、葛飾区などには、毎年、全国から多数の弟子入り志願の問い合わせがきます。
そこには二つほど問題があるんです。
一つは、伝統工芸の職人さんって、一人前になれる人ってそんなに多くないということです。
その一番の理由が、自己管理能力。
たとえば、品物を作ったものの、自分が納得できないと売らない。サラリーマンの僕にしてみれば、ちょっと価格安くして売っちゃえばいいのにとか、せめて原材料費を回収してなどと、思うのですが、職人仲間から認められている人で、それをする人はいません。
しかも、そのこだわりは、素人目には、まったくわからないことがほとんど。それでも長い間使ううちに差が出てくるからと、一切妥協しないのです。
結局、そういう職人さんだけが、まわりの信頼や顧客の信頼を得て、一人前になれるんですよね。
http://www.syokuninkai.com/
このサイトで紹介している職人さんは、みーんなそんな感じです。でも、そこまで厳しく自己管理をできるのも一つの才能というより、むしろ性格なわけでして(頑固ちゅーことです(^^;)技術さえあれば、誰でもなれるという世界ではないんですよね。
次にもう一つの理由。それが、時流。
たとえば、木彫刻の職人さんたちは、欄間や柱などの建築の彫刻が主な仕事でしたけど、現在、その日本建築が激減しています。床の間なんて都心では、もうほとんど見かけません。
そうした日本人らしさとか、文化というのは確かになくなってはいないけど、確実に減っていて、伝統工芸というのは、そういった部分にぴったりと重なってしまうわけです。
将来が見えない状況で、弟子はとれないというのが親方の言い分。
「親方は仕事を教えるんじゃない。食うための道を教えるんだ」とくるわけです。
この間、立石の伝統産業館でサイトの打ち合わせをしていた時、一人の紳士が入ってきて、我々にたずねました。
「あのぉ、江戸友禅の広幅の風呂敷がどうしても欲しいんです」
「江戸友禅の風呂敷ですか?」
「ええ、5年ほど前に見て、欲しくてたまらなかったんですが、ようやく暇ができて、訪ねてこれました」
「ごめんなさい。その職人さんは数年前に体をこわされて、引退されました。もう江戸友禅の風呂敷はありません」
「ああ、そうでしたか。じゃ、どこに行けば買えますか?」
「もう、どこにもないと思います」
紳士は納得できないようで、しばらくあれこれ質問をされていましたが、友禅はあっても、広幅の風呂敷を作っている最後の職人さんが廃業されたのだと理解するにいたり、本当に残念そうでした。
その方の欲しかったのは、これです。
もう、画像しか残っていません。素朴で品のある伝統的な柄です。
かつては、こんな感じで作っていらっしゃいました。
で、その時思ったのが、こういったやり取りを今後何度もすることになるんだろうなあということ。
いや、やっぱりそれはいやなので、できるだけ、そうならないために新しい何かを作り出さないとと
心を新たにしたのでした。


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